「新たなる試み」
義志東京本店は今月末をもって閉店致します、と言ったら皆さんはびっくりするでしょうか。
冗談だと思われそうですが、これは本当です。平成17年に開店した弊社で只ひとつの
直営店があと半月ほどで一旦幕を下ろそうとしています。あっという間の5年間でしたが、
実に中身の濃い時間の中で様々な経験をさせて頂き、たくさんの勉強をさせて頂きました。
おかげさまで、義志は何の背景もなくゼロから立ち上げた服屋の暖簾を確固たる銘柄に
育てることができ、今では義志は独自の立ち位置でその信条を貫くブランドとして
多くの方々に認知して頂くようにもなりました。本当に、立ち上げからの5年間という
大事な序幕をこれほど多くの方々に支えて頂いたことに対し感謝の気持ちでいっぱいです。
改めまして、義志東京本店を応援、ご愛顧下さいまして誠にありがとうございました。
愛着のある店を閉めるということで、つい柄にもなく感傷的な書き出しに
なってしまいましたが、現状としてはそのような感傷に浸っていられるような
状況でもなく、現在は次の店の開店準備に社員一同追われているところです。
そう、実を言うと私たちは、今の店を閉めて、新たな店をこさえている最中なのです。
なぜそんな面倒なことをして新しい店舗を出店しようとするのかと思われる方も
いらっしゃるかと思いますので、会社を代表して私からご説明させて頂きます。
まず、理想を言えば、今の店を残しながらもうひとつ新しい店を作りたい
というのが正直な気持ちです。しかし、私たちは少人数の本当に小さな会社で、
今の体制では2つの店を同時に運営するということがままならないというのが
現実です。そこで、ここは思い切って、今純粋にやってみたいことに挑戦する
ということに重きを置き、現在の店を閉めて新しい店を作ることを選びました。
思えば、義志東京本店という店を持ったことで、私達は実に充実した活動を展開することが
できました。その活動を通じて、ファッションの枠を超えた様々な作り手や表現者、
そして日本をもっと面白くしていこうという気概を持った行動者たちと互いに
吸い寄せられるように出会い、ともに仕事をすることができました。
さらには、義志の使命や信条、そして商品そのものに共感してくれる
お客様という名のたくさんの理解者を得ることができました。これは、今後私たちが
この活動を続けて行く中で何にも代え難い財産であり、お互い刺激を与え合いながら
共に日本社会を発展させていく同士であるとも勝手ながら考えています。
そんな出会いを積み上げていく中で、「日本は自分が考えていたよりももっと面白い」
という気付きと、そんな日本の面白さを日本の首都である東京はまだ十分に
発信しきれていないという歯がゆい思いが募ってきました。もちろん、
その一翼を義志という服屋が担ってやるという気概はいささかも衰えては
おりませんが(むしろ増す一方ですが)、同時に、「義志」というブランドの枠に
とらわれない商品提案や企画・制作活動にももっと進んで関与していきたい
という欲求が抑えきれなくなったというのが今回の動きの大きな動機のひとつです。
また、弊社には「小萩」という女性向けのブランドもありますが、このブランドを
今までの経験を踏まえた上で改めて構築し直し、再び発信したいという思いに
駆られたのも、新たな店舗展開に挑戦する動機のひとつになっています。
小萩の活動は、ここ4年間ほどは衣装の制作・プロデュースという日常から
離れたところでのデザイン提案に留まっていましたが、やはり女性の普段着に
対しても日本ならではの感性や表現を提案したいという思いが日々の制作活動の中で
自然と湧き上がり、同ブランドの再始動を決定致しました。
新しい店舗では、少しずつではありますが、小萩商品の発信も行っていきます。
そんな諸々の理由から、「義志東京本店」という殻を一度脱ぎ捨てて、
もう少し商品構成の自由度が高く、かつ、もっと多くのお客様に楽しんでもらえる
日本ならではの店を原宿に創出したいと考えるに至り、この度の決断に行きつきました。
新店では自社ブランドである義志と小萩の商品に加え、私達が是非とも皆様に
紹介したいと考える工芸作家やアーティストの作品、新しい発想と進化した
素材や技術により生み出された伝統工芸品やその技術を活かした共同企画商品、
そして、義志・小萩とは異なる世界観を持った他社の服飾ブランドも厳選して発信していきます。
新しい店は、そんな多様な感性と強い個性たちが主張し合いながら共存する
交流の場として原宿の地に新たな実験的空間を創出したいと考えます。
私達の先人が後世に伝え残してくれた良き流儀の本質を今日の生活に
則したかたちで継承するために。日常の生活にさらなる刺激や心地よさを
与えてくれる日本らしさはまだそこら中に埋もれています。私達の姿勢次第で
日本はもっと面白くなります。進化する日本文化を模索する場を求めて
これから誕生しようとする私たちの新たな空間を楽しみに待っていて下さい。